きのう、参議院でも臓器移植法の改正A案が可決・成立しました。施行は1年後になります。
新型インフルエンザの影響で今年は見送られたものの、WHOの勧告が来年にも出されるという状況で、混乱する政局に飲み込まれて廃案にならなかったことには、一定の評価をすべきかもしれません。廃案になった場合、また数年先延ばしということも考えられます。
しかし一方で、この法案がベストなものかというと、個人的には大いに悩みます。
衆議院解散という影がちらついていたがゆえに、時間切れを意識して一気に話が進みすぎ、必要な議論がなされたとは言い難い印象です。
今後の課題も山積みです。
前回のブログとも一部、重なりますが、パッと思いつくだけでも
・ガイドラインの詳細決定
(たとえば、同意に要する「家族」の範囲など)
・6歳未満の脳死判定基準の整備
・虐待児の判別をどう行うか
・疲弊している(小児)救急現場の対応体制づくり
・移植コーディネーターの不足
…などなど。
なかには1年では到底困難と思われるものあります。
とくに、(小児)救急現場の充実と移植コーディネーターの問題は重要です。
「十分な治療が尽くされた」と理解して初めて、ドナー家族は臓器の提供にイエスと言えるでしょうし、メンタル面も含めて一貫したケアがなければ、善意の裾野は広がっていかないでしょう。
改正案はあくまでスタートライン。
結果を喜ばしいものにするため、社会全体で運用をフォローしていく必要をつよく感じます。
サイは投げられた
2009 年 7 月 14 日臓器移植法・改正A案が衆院を通過
2009 年 6 月 19 日
見直し規定があったにもかかわらず、実質上の棚晒しにされていた臓器移植法の改正について、A案が衆議院できのう可決しました。とはいえ、参議院での審議を残していますので、先行きはまだまだ不透明ですが…。
A案のポイントを要約すれば、
1. 提供可能年齢
15歳以上 → 制限なし(0歳から)
2. 意思確認
本人の書面による意思表示+家族同意
↓
本人の生前拒否がなければ、家族同意でも可
3. 「人の死」の定義
臓器提供に限り、脳死は「人の死」
↓
(基本的に)脳死は「人の死」
といったところでしょうか。
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以前、移植医療について、大阪大学の移植医療部のドクターにお話を伺ったことがあります。
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新型インフルエンザのこれまで 3
2009 年 6 月 16 日
国内での散発的な発生は相変わらずですが、「喉元過ぎれば…」なんとやらというほどに、多くの人の関心はよそに移ってしまったようです。
ここにきて、政府が行った検疫による「水際作戦」に対し、有効性や弊害の有無について言及する報道や発言が断片的に出てきているようですが、きちんと評価するにはもっと情報がほしいところです。
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さて、新型インフルエンザに関する気になった話題が4つほど。
1. イギリスで患者1人死亡
2. 国内事例から推計する基本再生産数(R0)=2.3
(未成年に限ると2.8)[PDF]
3. 兵庫県の集団発生事例で疫学的リンク不明は7件
4. 新型インフルエンザの一部のウイルスに、
人の間で流行しやすくなる変異が見られる、とする報告
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