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新型インフルエンザのこれまで 4

2009 年 7 月 29 日 水曜日

九州北部や中国地方を記録的な豪雨がおそったり、梅雨明け宣言したはずの関東甲信越も戻り梅雨(?)のような不順な空模様がつづいています。さて、新型インフルエンザ関連の経過報告ですが…。

■新型インフル、夏になっても衰えず

夏場になると下火になると思われていた新型インフルエンザですが、国内の感染者数は増加するばかりです。
厚生労働省によれば、新規感染者の報告総数は、
  6/25  1000人超
  7/08  2000人超
  7/15  3000人超
  7/19  4000人超
  7/24  5000人超
という、右肩上がり。
季節性インフルエンザが春先から下降しているのとは対照的です。
(感染症情報センター:過去10年間との比較グラフ(週報)

■冬季の南半球では猛威

一方、冬を迎えている南半球での感染拡大は顕著です。
以前、オランダ・ユトレヒト大の西浦博氏は、5/9〜6/1までの感染例から日本国内での基本再生産数(R0)を2.3と推計しました。

同氏は、6月のニュージーランドでの基本再生産数(R0)を平均1.96と弾き、学校での集団感染が目立つ日本ほどではないにせよ、高い値であると推定しています。(The New Zealand Medical Journal 2009; 122(1299)

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新型インフルエンザのこれまで 3

2009 年 6 月 16 日 火曜日

国内での散発的な発生は相変わらずですが、「喉元過ぎれば…」なんとやらというほどに、多くの人の関心はよそに移ってしまったようです。

ここにきて、政府が行った検疫による「水際作戦」に対し、有効性や弊害の有無について言及する報道や発言が断片的に出てきているようですが、きちんと評価するにはもっと情報がほしいところです。

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さて、新型インフルエンザに関する気になった話題が4つほど。

 1. イギリスで患者1人死亡
 2. 国内事例から推計する基本再生産数(R0)=2.3
  (未成年に限ると2.8)[PDF]
 3. 兵庫県の集団発生事例で疫学的リンク不明は7件
 4. 新型インフルエンザの一部のウイルスに、
  人の間で流行しやすくなる変異が見られる、とする報告
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新型インフルエンザのこれまで

2009 年 5 月 18 日 月曜日

検疫ではない国内初感染が神戸で報告されたのが16日(金)。
政府は「国内発生早期」を宣言しましたが週末を経て、今朝までに三菱東京UFJ銀行・三宮支店行員にも感染が確認され、兵庫・大阪で一気に93名まで感染者が増えました。「感染拡大期」への移行も時間の問題という印象です。

ウイルスそのものについて、現時点での研究機関、報道発表を暫定ながら個人的にまとめると…。

———————————

■潜伏期間:2〜7日

(米疾病対策センターCDC)

■感染力:基本再生産数(R0)=3.1

(フランス国立衛生研究所などの研究チーム/ユーロサーベイランス電子版)

3/11〜5/2までのメキシコでの感染者数に基づき、ヒト−ヒト感染にかかる日数を3.1〜4.6日と想定して計算。再生産数は2.2〜3.1人と弾き出した。いっぽうで再生産数=1.4〜1.3とする疫学分析(英Imperial CollegeとWHO研究グルーブ)も。

※ちなみに日本で春に流行る麻疹(はしか)はR0=12〜18。SARSは4前後。季節性のふつうのインフルエンザは3程度。現段階での疫学的分析にはどうしても不確実な部分があるのは当然ですが、いずれにせよ季節性インフルエンザより感染力がやや高いと見ておくべきが妥当のようです。
※なお、今回の新型インフルエンザは、発症24時間前から感染力を持ち、発症後5〜7日間は持続するとされています。

■致死率:0.4%

(英ロンドン大を中心とする世界保健機関WHO研究チーム/サイエンス電子版)
※スペイン風邪は約2%だったとされ、アジア風邪は0.5%ほど。感染力を調査した先の英Imperial CollegeとWHO研究グルーブも、同様の分析。

■遺伝的由来:

8分節あるRNAを分析すると、
3本が北米のブタ由来、2本がアジア・ヨーロッパのブタ、2本がトリ、1本がヒト由来。
※また採取された各株の変異から分析すると、誕生から数ヶ月と間もないという見立て。

 

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