国内での散発的な発生は相変わらずですが、「喉元過ぎれば…」なんとやらというほどに、多くの人の関心はよそに移ってしまったようです。
ここにきて、政府が行った検疫による「水際作戦」に対し、有効性や弊害の有無について言及する報道や発言が断片的に出てきているようですが、きちんと評価するにはもっと情報がほしいところです。
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さて、新型インフルエンザに関する気になった話題が4つほど。
1. イギリスで患者1人死亡
2. 国内事例から推計する基本再生産数(R0)=2.3
(未成年に限ると2.8)[PDF]
3. 兵庫県の集団発生事例で疫学的リンク不明は7件
4. 新型インフルエンザの一部のウイルスに、
人の間で流行しやすくなる変異が見られる、とする報告
1.は南北アメリカ大陸以外では初の死亡例がグラスゴーでありました。報道によれば入院治療中の患者で、他に別の疾患も抱えていたようです。
2.はユトレヒト大学の西浦博研究員らのチームによるもの。
メキシコでの流行を対象にした他の研究では、1.4〜1.3とするものや3.1とするものありますが、やはり季節性インフルエンザと同程度と見ておくべきなのでしょう。
で、とにかく一番気になるのが、河岡義裕・東大医科学研究所教授らのチームが報告した4.です。
これは複数の株を分析したところ、一部の新型ウイルスについて、ウイルス細胞表面にあるタンパク質「ヘマグルチニン(HA)」に、ヒトの細胞に取り付きやすくなる変異が見られたというもの。
ウイルスの変異はとても早いですから、まさにいまその過程を見ているのかもしれません。
(同様の変異は、高病原性鳥インフルエンザH5N1亜型が人に感染した際にも見つかっている)
→ヘマグルチニン(HA)についてはこちらのポストを
ちなみに、河岡教授はリバースジェネティックなどの手法をつかい、インフルエンザやエボラなどを対象に、ウイルスが病原性を獲得したり発揮したりする仕組みを精力的に研究してユニークな成果をぞくぞくと上げています。余談ですがハンサムです。
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