しばしば、生化学や分子生物学の調べ事をしていると「in vivo」とか「in vitro」という言葉が出てきます。
in vivo(イン・ビボ)は「生体内で」、in vitro(イン・ビトロ)は「試験管内で」という意味で、その実験がどんな環境下で行われたのかを大まかに示しています。
(ほかにも「in situ」とか「in silico」なんてのもあります)
こうした言葉はラテン語に由来するものがほとんどです。
中世では、公の文書や学術における公用語として、ラテン語が用いられていたその名残といってもいいかもしれません。
で、意外なところでこれが「つながっている!」と、知って驚いたのが、喜多川歌磨呂の美人画。
もうカンのよい方はお分かりですね。
…イン・ビトロ、びいとろ、びいどろ。そう、その通り!
当時、流行ったガラスのおもちゃと女性をモチーフにした「びいどろを吹く女」が、その一枚。誰でもなんとはなしに知っている浮世絵のひとつだと思います。
江戸時代にガラスのことを「びいどろ」と呼んでいましたが、佐賀県の武雄市図書館・歴史資料館のHPによれば、これはポルトガル語の「Vidro(ヴィーズロ)」が由来だとか。
ラテン語はかつてローマ帝国のラティウム(現在のラツィオ州。「長靴」で言えば、弁慶の泣き所の辺り !?)で生まれ、ヨーロッパ中に広がり、たくさんの言語の母体になった言語。
ポルトガル語もまた、しかり。
シチュエーションがまったく違うので、まさかつながっているとは夢にも思っていませんでした。
もうすでに、母語としてラテン語を話す人はこの星にはいません。
しかし、それでもなお言葉の遺伝子は、私たちが思う以上にタフなのですね。
余談)
刺身のビントロは、脂がのったビンナガマグロのことだそうで、さすがにこちらは無関係。まったく別の生き物なのに、進化の過程で様相などがよく似る生き物がいますが、こちらはそんな感じでしょうか。(笑)
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