以前、取材中にどきっとした経験があります。
インタビューに応えてくださった方が、胸を押さえて黙りこんだのです。
こちらの質問に対して「反応がよくないな」、なにか気分を害すようなことを口にしてしまったり、質問が的を得ていないのだろうかと気になりだして、しばらくしたときのことでした。
取材相手の方は小さなスプレー缶を取り出し、口元でシュっとそのガスを吸い込むと、肩で大きく息をしました。
その方は心臓に持病があり、取材中に軽い発作を起こされたのです。
幸い大事に至らず、しばらくの休憩後、取材はつづけられ無事終了しましたが、やっぱりAEDの使い方ぐらいは知っておかないといけないな、と思わされました。

トレーニング用のAED
というわけで、AED(自動体外式除細動器)の簡単なレクチャーを聞きに行ました。
実際にAEDに触って手順を確かめてみると、想像していた以上に、注意点が多くてちょっと意外なカンジ。
「AEDから流れる音声ガイダンスに従えばいいだけ」という具合に紹介されることが多いのは、敷居を低くして、いざというときに誰もが恐れずにAEDを利用してもらいたいからなのでしょうが、やっぱりそれだけでは不十分のようです。
たとえば、前述のような狭心症を抱えている方のなかには、胸にパッチと呼ばれる貼り薬をしていることがあります。
この場合は、AEDの電極パッドを当てる前に、パッチを剥がすのが正解。
湿布などの薬剤の上から電極パッドを貼ると、AEDが心臓の動きをただしくキャッチできなかったり、電気ショックの際にヤケドをおこす可能性があるからです。
(ペースメーカーを埋め込んでいる場合には貼る位置を変更する)
ほかには、
・ネックレス
・汗
も要注意!
海やプールでおぼれた人や大汗をかいている患者さんの場合、水分を拭き取る必要があります。
電気がほかに流れて十分な効果が得られなかったり、最悪の場合、救助者が感電する危険性もあるそうです。
…なんていうことをいろいろと聞いていて思ったのは、
「胸毛の濃い人はどうするの?
胸毛のせいで電極パッドが胸から浮いてしまうと、せっかくの電気ショックが届かないのでは!?」
という問題。
そう、「最もセクシーな男」ヒュー・ジャックマンにAEDをするなら…、って話です。
訊ねてみると、やはりそういう場合は、胸毛を取り除くのが正解だということで、ちゃんとカミソリがAEDの箱の中にセットされているものもあれば、製品によっては、予備のパッドで脱毛するケースもあるそうです。
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心室細動をAEDで取り除くのが1分遅れるごとに、社会復帰率は7〜10%程度ずつ下がるといわれています。
1分1秒を争うそのときになって、「AEDをつかっていいのだろうか?」「どう、すればいいのか?」と、それまで想像していなかった迷いに直面することも多々あるはずです。
たとえば、「妊婦さんや子どもに使用しても問題はないのか?」なんてことは、実際の患者さんを見て初めて気になりだすのではないでしょうか?
消防署や日本赤十字社では、AEDや救命手当の講習を定期的に開いています。
一度、参加しておくと、いざというときに落ち着いて行動できるのでおススメしたいですね。
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